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脳科学者  澤口俊之氏による脳科 学情報

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医療&健康ナビ:そううつ病・うつ病 発症に関わる遺伝子を探す研究が始まりました。

◆そううつ病・うつ病 発症に関わる遺伝子を探す研究が始まりました。

◇患者急増の原因究明へ

ストレス社会の中で患者が急増しているそううつ病やうつ病。その発症に特定の遺伝子が関与していないかどうかを探ろうと、藤田保健衛生大(愛知県豊明市)医学部の岩田仲生教授(精神医学)らが調査に取り組み始めた。研究グループは一般の会社員など延べ1万人以上から遺伝子サンプルを提供してもらい、遺伝子解析や面接調査を重ねる予定。同種の研究としては世界最大規模のサンプル数になるという。そううつやうつの発症メカニズムはほとんど分かっておらず、研究成果の今後の予防・治療薬開発への応用にも期待がかかる。

◇職場環境の把握も

研究グループがまず取り組むのは、協力者の職場環境などの把握だ。「職場の仕事に自分の意見を反映できるか」「職場の雰囲気は友好的か」「家族とどのくらい気軽に話ができるか」。このような設問に面接や電子メールで毎月回答を求める。酒量や喫煙の頻度なども聞き、職場や家庭でのストレスを継続的に把握することを目指す。遺伝子サンプルは協力者の唾液などから採取する。

すでに地元の大手企業や病院などに協力を依頼しており、今年10月から5年間の研究期間に、会社員や看護師など1万人以上が参加する見込みという。具体的な症状が見られた対象者は治療にも協力する。

◇気分障害、100万人超

岩田教授によると、そうとうつの状態を交互に繰り返すそううつ病は主に遺伝要因が強く影響するとされ、うつ病には遺伝要因と周りの環境の両方が影響していると考えられている。面接によるストレス調査は、特にうつ病の研究に役立てられる。

遺伝子サンプルは理化学研究所が保有する約2万人分の遺伝子データとも比較し、症状の有無と遺伝子の特徴などの関連を調べ、発症に関わる遺伝子を特定することを目指す。

厚生労働省や警察庁によると、うつ病などを含む「気分障害」の患者は増加を続け、08年に初めて100万人を突破した。98年以降、年3万人を超える自殺の約4割は気分障害が関連しているとみられている。

背景には、職場での成果主義導入や雇用の不安定化による職場環境の悪化、貧困率の増加などさまざまな要因が指摘されている。しかし、国の研究予算がこれまでがんや糖尿病などに重点的に配分されてきたこともあって、科学的な原因究明はこれから。日本精神神経学会などはうつ病をがん、心臓病と並ぶ「3大疾患」と位置づけ、国民病として対策に力を入れるよう求めている。

◇アプローチ、多様に

今回の研究は文部科学省の脳科学研究戦略推進プログラムの一環。学会などの声を受けて国も研究対策に重い腰を上げた形で、他に広島大、北海道大、群馬大などの各グループが、脳画像解析、動物の行動解析など、さまざまな角度からうつ病研究を実施する。多様なアプローチで病態の全容解明を後押しする方針だ。

岩田教授によると、現在広く使用されている抗うつ薬は、脳内のセロトニンなどの神経伝達物質に作用しているが、セロトニンがそもそも発症にどの程度関わっているのかは不明。再発率の高さを考えても、薬の治療効果は十分といえないという。

教授は「患者が増える一方で、診断技術は30年前から大きな進歩はない。発症に影響する遺伝的要因やストレス内容が解明されれば、予防や治療も進み、職場などのパフォーマンスも上がる。より暮らしやすい社会になるよう研究を役立てたい」と話している。【安達一正】

毎日新聞 2011年12月4日 東京朝刊

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