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脳科学者  澤口俊之氏による脳科 学情報

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インスリン鼻スプレーで治療!?初期のアルツハイマー病を改善経鼻インスリン療法

ダイヤモンド・オンライン 2月6日(月)7時0分配信

2型糖尿病を放置、あるいは血糖コントロールを怠けていると、命にかかわる病気につながりかねない、というのは周知の事実。最近は心血管系に与える影響だけでなく、アルツハイマー型認知症(AD)や脳血管型認知症を発症するリスクが高いことも知られるようになってきた。

 もともと脳はブドウ糖の一大消費地帯。糖質消費にはインスリンが必須であり、糖尿病の背景にある「インスリン抵抗性」と「インスリン分泌不全」が脳に影響するのは納得がいく話だ。実際、AD初期には脳の海馬を含む領域で、インスリン濃度が低下していることが知られている。しかも、この現象は2型糖尿病患者に限って生じるのでもなく、脳だけ“糖尿病”というケースもあるらしい。まだ議論の余地はあるものの、一部の専門家はADを「3型糖尿病」と呼び始めている。

 ともあれ、さまざまな状況証拠からADとインスリンとのかかわりは明らか。となれば、ADもインスリンで治療できそうだ、と考えるのは当然だろう。もっとも、インスリン注射では「低血糖ショック」のリスクがあるので、鼻粘膜からゆっくり脳血流にインスリンを到達させる「経鼻インスリン療法」が考え出された。

 昨年9月に報告された米国での試験では、AD初期あるいは、軽度認知障害患者に鼻スプレーで4ヵ月間、毎日インスリンを吸引してもらい、半年間の経過観察を行った。

 その結果、低用量の経鼻インスリン療法を受けたグループの8割は、一つの物語の内容を20分後にも記憶し、認知機能も改善されていた。一方、高用量のインスリンを投与されたグループでは、記憶の改善は見られなかったが認知機能の改善が認められた。試験を率いる研究者によれば、今回の結果は大規模臨床試験への試金石になるという。

 現時点で、ADを根本的に解決する治療薬は存在しない。今回の結果で興味深いのは、AD発症にかかわると推測されるインスリンがキーになっている点だ。治療薬開発のついでに、発症メカニズムの解明も期待できるかもしれない。

 (取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)

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