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脳科学者  澤口俊之氏による脳科 学情報

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アルツハイマーめぐるジレンマ 治療法のない病の早期発見、告知すべきか

ウォール・ストリート・ジャーナル 5月23日(水)10時9分配信

読者がアルツハイマー病の初期段階にあるとしたら、それを告知されたいだろうか。

 科学者らがますます多くの診断方法を見つける一方、予防法や治療法は未確立だ。この問いは本人と家族に常につきまとう。

 リンダ・ダンガードさんは昨年、脊椎穿刺法による検査を受け、56歳にしてアルツハイマー病の初期段階にあることが疑われるとの診断を受けた。

 夫のコリンさん(70)は妻に検査を許したことを「人生最大の過ちだった」と表現する。リンダさんはまだ普通に生活ができ、活発で、(米カリフォルニア州)マリブで鞍を扱う自営業を続けられる。しかし診断のおかげで、リンダさんは運転免許証を失い、友人の多くを失い、ほとんど自信を喪失した、とコリンさんは言う。「(妻の)黄金に輝く年月は診断のおかげで吹き飛んでしまった。誰もどうすることもできないなら、(診断は)残酷だ」と述べた。

 ときどき混乱し、同じことを繰り返すことがあるというリンダさんは、「人生で爆弾が破裂したように感じた」と話す。「自問するのよ、なぜ私なのと。ちゃんと食べて、運動もしているのに。家族の中で他に誰も(アルツハイマー病は)いない」とリンダさん。

 従来、アルツハイマー病の唯一の診断法は解剖しかなかった。アルツハイマー病の特徴である斑点(プラーク)やもつれ(タングル)は脳に存在するからだ。生前に解剖はできないから、医師たちは症状に基づき、他の病気では説明がつかない場合に、アルツハイマー病と診断した。しかし専門家によると、脳のプラークやタングルは症状が出る10~20年前に現れ始めるのだという。

 これらの脳内の変化を検知できる新しい診断法が出てきており、今後もその数は増えそうだ。先月、米食品医薬品局(FDA)は放射性を帯びた色素を使った脳内プラーク診断薬「アミビッド」を認可した。これを使えばPET(陽電子放射診断層撮影)スキャンでプラークが視覚化できる。今夏にも市場に出回る予定だ。

 リンダさんが受けた脊椎穿刺法は、プラークやタングルに由来する脳脊髄液の変質を検知するものだ。この検査法は数年前から使われているが、主に研究用として利用される。

 これらの検査法はいずれも保険が適用されず、最終的な診断となるものでもない。陰性の診断は、認知力の低下がアルツハイマー病によるものである可能性を減らす。65歳以上の20~30%は脳にプラークをいくらか持っているが、多くは通常の認知力で過ごしている。プラークを持った人がいずれ発症するかどうかは不明だ。

 遺伝子テストはアルツハイマー病を発症させる危険性を高める遺伝子の変異を検知することができる。なかには将来必ず若年アルツハイマー病を発症するという遺伝子の変異もある。この遺伝子のキャリアの子どもは50%の確率で同じ遺伝子を受け継ぐことになる。研究者たちは、この変異遺伝子を持ったコロンビアのある大家族を対象に、アルツハイマー病の予防薬を試す予定だ。多くの研究の場合と同様、家族のメンバーは誰が変異遺伝子を持っているかは知らされない。効果的な治療法がないなかで、告知は絶望的だからだ。

 リンダさんの姉妹、ドーン・コーヒーさんは、同じことを繰り返すリンダさんを数年前に最初に懸念したのはリンダさん自身だった言う。ドーンさんも母親もリンダさんに調べるよう勧めたという。

 夫のコリンさんは「(アルツハイマー病の)患者にとって、この診断は何の役にも立たない。精神的に崩壊させるだけだ」と言う。

 しかしドーンさんは別の意見だ。「私は(リンダさんを)心から愛している。私たちは昔からずっと親友同士だ。でも彼女は悪くなっているし、(夫は)それを否定する」。リンダさんの状態をめぐる意見の相違が家族間に亀裂を生じさせた、とドーンさんは話す。

 アルツハイマー病の患者の面倒をみる専門家は、家族の意見がぶつかるのは典型的だと指摘する。患者が日常生活のある部分では通常通りに生活でき、別の部分ではうまくできないというのも典型的だという。

 ただ、初期段階の診断は家族に時間的余裕を与え、経済面および法的な準備、またヘルスケアの手配といったものに本人が参加することを可能にする。また症状の出方も予測不可能だ。アルツハイマー病と診断された後、何年も働き、自立し続ける人もいる。ある専門家は活動的で社会的なつながりを持つことは患者の豊かな生活にとって重要なことだと指摘する。

 リンダさんのケースで家族全員が同じ意見なのはこの点だ。「私はただ彼女に毎日をできるだけ幸せに生きていてほしいだけだ」と夫は言う。

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