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脳科学者  澤口俊之氏による脳科 学情報

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脳力ゲーム、効果のほどは?


ナショナルジオグラフィック 公式日本語サイト 4月16日(火)16時0分配信



脳を鍛えるというゲームがあふれているようだ。オンライン上には、注意力、記憶力、創造性、集中力などを向上させるという多種多様なテスト、クイズ、ゲーム、フラッシュカードがある。しかし、実際に効き目があるのだろうか? 無いかもしれないという研究が最近公開された。

 脳を鍛えるゲームで知的機能が向上するのか、オーストラリアの税務署員を対象に実験したところ、ゲームをせずに自然のドキュメンタリー動画を見た人の方が言語技能のテストでよい成績を収めるという結果になった。生活の質と自分の評価も、後者の方がスコアが高かったという。

 オーストラリアのシドニーにあるニューサウスウェールズ大学の大学院生、ケイト・ボーネス(Cate Borness)氏らの研究チームは、まず、公共部門で働く135人を対象に、生産性、ストレス、認知機能、および生活の質の全般に関してテストを行い、基準を得た。

 次に、ボーネス氏らはこの135人を実験群と対照群にランダムに振り分けた。実験群は、Happy Neuronというソフトウェアを使って短時間の脳力訓練を16週間にわたり行った。対照群は同じ16週間、自然に関する短いドキュメンタリー動画を視聴し、動画を見た確認として動画に関する簡単な質問に答えた。この動画には、ナショナルジオグラフィックの動画サイトのものが使われた。

 対照群(アクティブコントロール)の被験者にドキュメンタリー動画を視聴するという課題が与えられたのは、脳力訓練アプリによる効果と見られるものがあったとき、その理由が、実験群は脳がフル回転していたのに対し対照群は暇だったからとなることを避けるためだ。

◆自然の動画と言語

 ボーネス氏は、「知的機能の訓練プログラムという面では、大きな影響はみられなかった」と話す。しかし実は、奇妙なことだが、この実験ではドキュメンタリー動画を視聴した対照群に、統計的に有意なプラスの効果があった。

 自然に関する動画を見た対照群は、ストレスが減少し、生活の質が向上したと答え、さらに、ボーネス氏らが課した2つのテストで言語技能が向上していたのだ。

 これについてボーネス氏は、動画とそれに関する短い質問が言語ベースのものだったのが原因かもしれないと話す。「動画の説明を聞いて、それに関する質問に答えている」と同氏は言う。

 一方、脳を訓練するゲームには、知能と認知のさまざまな値を向上させるものがあり、言語技能を強調したゲームは全体のおよそ2割しかなかった。

 言語技能を鍛えるゲームのひとつに、ワードの最後の文字が別のワードの最初の文字になるように箱の中に言葉を入れていくゲームがあった。この言語ゲームをプレイしたことで言語技能はわずかに向上したが、それでもドキュメンタリーを見たグループには遠くおよばなかった。

 これについてボーネス氏は論文で、記憶、集中力、論理的思考などほかにさまざまな能力のためのゲームがあり、総時間の5分の1しか言語には当てられなかったからではないかと推測している。今回の実験では、そうした言語以外を鍛えるゲームの効果は測定されなかった。

 それでもこうした脳力訓練ゲームは一部の人々には有用な可能性があるとボーネス氏は話す。「製品の効果は疑問の余地があるだろう。(しかし)効果が出るまで十分にプレイしていないという問題もあるかもしれない」。ただし、「何をもって“十分”となるのかはまだわかっていない」と付け加えた。

 このような結果になったが、自分では今も脳を鍛えるゲームを使っているとボーネス氏は話す。「楽しいし、私は何もしないというのが駄目な人間なので、携帯電話でつないでプレイしている」。

 今回の研究結果は「PLoS ONE」誌に2013年3月28日付で公開された。

Rachel Kaufman for National Geographic News



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