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北大、アルツハイマー病関連ペプチドを操って機能性ナノワイヤを作製


マイナビニュース 4月24日(水)17時10分配信



北海道大学(北大)は4月23日、アルツハイマー病の原因分子と考えられているアミロイドペプチドが、水溶液中で自発的に集合(自己組織化)してナノワイヤ構造を形成する性質に着目し、この分子的性質を制御することで効率的に多彩な機能化ナノワイヤを作製する新規手法を開発したと発表した。

成果は、同大 大学院理学研究院化学部門 坂口和靖 教授らによるもの。物質・材料研究機構(NIMS) 魚崎浩平フェロー、カリフォルニア大学 サンタバーバラ校 Michael T. Bowers教授のグループと共同で行われた。詳細は「Advanced Functional Materials」掲載された。

機能化ナノワイヤは、集積回路への利用や、その微細構造に由来する伝導性・触媒・光特性などの新規性質が期待されることから、ナノデバイス構築の上で重要となっている。しかし、このような構造を作製するための微細加工技術は、技術面およびコスト面からの限界が指摘されているため、分子の自己組織化能を効果的に利用した機能化ナノワイヤ形成法の開発が期待されている。

アミロイドペプチドは、自己組織化により線維状構造(ナノワイヤ)を形成する分子であり、この線維状構造体は、アルツハイマー病などの神経変性疾患者の脳内蓄積物として発見された。しかし、同構造が高い安定性を有し、材料科学的観点から魅力的であることから、アミロイドペプチドを用いた機能化ナノワイヤの形成に関するさまざまな研究がこれまでに進められてきた。

ペプチドには化学的手法によりさまざまな修飾が可能なことから、機能分子を修飾したアミロイドペプチドを自己組織化させることで、設計上は機能化ナノワイヤを容易に得ることができると考えられている。しかし、修飾した機能分子が自己組織化に影響を与えナノワイヤ形成を阻害してしまうため、これまで導入できる機能分子の種類は限定的であったことから、自己組織化を効果的に制御する手法が求められていた。

研究グループは今回、アミロイドペプチドに新たな相互作用界面を与えるという着想のもと、末端に3つのアミノ酸を付加した新規アミロイドペプチド(SCAPペプチド)をデザインし、異なる種類のユニットを有する複数のSCAPペプチドを混合することで効果的に自己組織化を制御する混合SCAP法を開発した。

さらに、NIMS国際ナノアーキテクトニクス拠点の魚崎浩平フェローおよびカリフォルニア大学サンタバーバラ校のMichael T. Bowers教授らとの共同研究により、原子間力顕微鏡法やイオンモビリティ質量分析法を用いて、混合SCAP法によりもたらされる新規の自己組織化メカニズムを明らかにした。また、機能分子との特異的な結合能を持つプローブ分子をSCAPに修飾したP-SCAPを合成し、効率的な機能化ナノワイヤ形成が実現された。

3個のアミノ酸(リジン×3またはグルタミン酸×3)ユニットを付加した複数のSCAPを混合することにより、高い線維伸長が得られ、長いアミロイド線維の形成が見られた。これは、典型的なアミロイド性線維の10倍以上の長さであり、これまでの報告で最大のアスペクト比(長さ/幅>8000)を有している。また、この促進効果がどのように働くかを調べるために、数分子のアミロイドペプチドの会合状態を知ることができるイオンモビリティ質量分析法による解析を実施したところ、混合SCAPにより、アミロイドペプチド同士の相互作用能が向上しているだけでなく、会合状態の構造が線維形成に適した状態に変化しているといった特性が明らかになった。

研究グループでは、今回の成果は、汎用性の高いものであり、次世代ナノテクノロジーの開発に寄与することが期待されるとコメントしている。特に酸化チタンは半導体や光触媒としての機能を有することが知られており、混合SCAP法により形成した超長鎖ナノワイヤはナノ電極間の配線に有用であると考えられるため、ナノ電子デバイスやセンサの開発に繋がることが期待されるとする。また、今回の研究で見出されたアミロイド線維形成の促進機構は、アルツハイマーやアミロイドーシスなどの疾患性アミロイド線維の形成機構の解明や阻害手法の開発への展開が考えられるほか、さまざまな種類の無機物性ナノワイヤ形成への応用も可能であることから、複数の無機物を組み合わせることで、新たな物性を有するナノワイヤ創製などの展開も期待できるとしている。

(日野雄太)

[マイナビニュース]



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