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脳科学者  澤口俊之氏による脳科 学情報

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小鳥は家禽化により脳内遺伝子の発現パターンが変化する - 北大など


マイナビニュース 6月13日(木)14時10分配信



北海道大学(北大)は6月11日、米ロックフェラー大学、東京大学との共同研究により、同種であるのにも関わらず異なるさえずり方をするという特徴を持つ小鳥である「ジュウシマツ」(家禽型)と「コシジロキンパラ」(野生型)の「アンドロゲン受容体」の脳内の発現パターンが違っていることを明らかにし、さらにゲノム上のアンドロゲン受容体の発現調節領域におけるDNAメチル化状態が異なることも発見したと発表した。

成果は、北大大学院 理学研究院の和多和宏准教授らの国際共同研究チームによるもの。研究の詳細な内容は、英国時間5月22日付けで欧州神経科学誌「European Journal of Neuroscience」に掲載された。

ジュウシマツとコシジロキンパラは同種の鳴禽類で、おおよそ200年前に野生型のコシジロキンパラを日本で家禽化してジュウシマツが作出されたという経緯を持つ。そしてこの家禽化の過程で、ジュウシマツとコシジロキンパラは同じ種であるにも関わらず、さえずり方(発声パターン)に違いが生じるに至った(一般的にジュウシマツの方が複雑な歌をさえずる)。

これまで、同種であることからゲノム配列や脳内の神経回路の構造も似ているはずなのに、なぜ異なる発声パターンを持つようになったのかまったくわかっていなかった。もう少し広い言い方をすれば、学習によって獲得される動物行動がいかに進化してきたのか、まだわかっていないということである。

研究チームはこれまでに収集してきた遺伝子を使って、ジュウシマツとコシジロキンパラ間の脳内発現パターンの比較を続けてきた。さらに、ゲノム配列の違いに起因しない遺伝子発現の違いを明らかにするため、大脳基底核を構成する細胞の「エピジェネティクス」変化の可能性を検証すべく、ゲノム上のアンドロゲン受容体の発現調節領域における「DNAメチル化」状態が調べられた。

その結果、たまたま男性ホルモン受容体として知られるアンドロゲン受容体がジュウシマツの大脳基底核で発現が高く、コシジロキンパラではそうでないということが判明したのである。脳内でも大脳基底核は発生学習に重要な部位だ。実際のさえずり方の詳細な解析も行われ、声と声の間隔のばらつき度合と今回見つかったアンドロゲン受容体の発現量に正の相関があることもわかったのである。これは、エピジェネティクス状態の違いによって脳内の遺伝子発現パターンや量を変えることで神経回路の性質を変え、行動パターンの違いを生み出す可能性を示唆するという。

なおエピジェネティクスとは、DNAやDNAに結合すタンパク質の後天的な修飾により起こされる現象を扱う学問のことだ。別のいい方をすれば、同じゲノムを持ちながらも種類が異なる細胞の間でなぜ遺伝子発現(つまり形質)が違うのかを研究するものである。また「DNAメチル化」とは遺伝子発現の制御様式の1つで、DNAのCpGという配列でシトシンにメチル基が付加される修飾のことをいう。それが起きるとどうなるかというと、DNAのその領域は不活性化され、そこにある遺伝子は発現されなくなるのである。

このエピジェネティクス状態の変化は、同じ人でも、皆違った考え方を持ち、行動パターンや性格が異なることにつながるという。同じ動物種でもなぜ個体ごとに行動がそれぞれ違うのかは、「氏」(DNA)と「育ち」(環境)の問題として、現在でも多くの関心が寄せられている。なおゲノムのエピジェネティクス状態は、神経活動などで変化することが最近明らかになってきている。

今回の成果により、脳内の神経回路構造やゲノム配列が非常に似ていても、ゲノムのエピジェネティクス状態が変わることで、ある特定の遺伝子のちょっとした発現量やパターンが変わり、それによって神経回路の性質が変化し、行動そのものもが変わる可能性が示された形だ。今後、これらの直接的な関連性をさらに研究していく必要があるとしている。

(デイビー日高)

[マイナビニュース]



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